20140716 19時24分 川内原発 安全対策「合格」の審査書案了承
鹿児島県にある川内原子力発電所について、原子力規制委員会は九州電力の安全対策が事実上、審査に合格したことを示す審査書の案を了承しました。 <br />一般からの意見募集を経て川内原発は新しい基準に適合する初めての原発となりますが、そのあとも地元の同意や設備の検査などが必要で再稼働は早くて10月以降になるとみられます。 <br /> <br />川内原発1号機と2号機で進められている九州電力の安全対策を審査してきた原子力規制委員会は「原発の新たな規制基準に適合している」とする審査書の案を全会一致で了承しました。 <br />審査書の案は17日から来月15日までの30日間、一般からの意見募集が行われ、寄せられた意見を踏まえた正式な審査書が完成すると、川内原発は原発事故を受けて見直された新しい基準に適合する初めての原発となります。 <br />その後は再稼働の必要性や重大事故への対策などを住民が十分納得できるように国や九州電力の説明がなされるのかや地元自治体がどのような判断をするのかが焦点になります。 <br />また九州電力は原発に設置された機器の詳しい設計の資料などを提出して規制委員会の認可を受ける必要があるほか、設備の検査などの手続きが残されていて、九州電力が目指す川内原発の再稼働は10月以降になるとみられます。 <br />「1つの山を越えた」 <br /> <br />原子力規制委員会の田中俊一委員長は会合を終えたあとの会見で、「もう少し早くまとめられるかと思ったが、いろいろあって時間がかかった。安全を確保するため、重大事故対策をハードとソフトの両面できちんと評価したし、自然災害も適切に評価してきた。今後も改善を図っていくが、1つの山を越えたと思う」と、心境を述べました。 <br />審査を経た川内原発の安全性については、「一定程度、高まった」と評価したうえで、「まだ自然のいろいろなことや技術も含めて、分からないことや人知の及ばないことがある」と述べて、基準を満たせば事故のリスクがゼロになるわけではないという考えを改めて示しました。 <br />そのうえで再稼働の判断については、「事業者と住民、それに政府など関係者の合意で決まることで、そのベースとしてわれわれの審査がある」と述べ、規制委員会は関与しないという従来からの考えを強調しました。 <br />一方、ほかの原発の審査については「高浜原発は論点がほぼ整理されているし、玄海原発も相当、詰まってきたと感じている。審査書のひな形ができれば、いつとは言えないが、私が期待したようにある程度、進んでいってくれると期待している」と述べました。 <br />「安全確保に万全期す」 <br /> <br />九州電力は「今後とも、原子力規制委員会の審査に、真摯(しんし)かつ丁寧に対応するとともに、更なる安全性・信頼性向上への取り組みを、自主的かつ継続的に進め、原子力発電所の安全確保に万全を期してまいります」というコメントを出しました。 <br />「安全だと理解」 <br /> <br />川内原発が立地する薩摩川内市の岩切秀雄市長は審査書案が了承されたことについて、「今後も原子力規制委員会には厳正かつ慎重な審査と確認を行ってもらうとともに、九州電力には適切な対応を求めたい」と述べました。 <br />そのうえで、「厳しい規制基準をクリアして審査書の案が了承されており、川内原発は安全だと理解している。安全を大前提としたうえでの再稼働については、市民の理解を得られていると考えているが、再稼働については今後、議会の意向を踏まえて考えていきたい」と話していました。 <br />「安全なら再稼働進めたい」 <br /> <br />安倍総理大臣は、宮城県東松島市で記者団に対し、「原発は安全第一で取り組んでいかなければならない。今般、審査書案が提出されたことは一歩前進だと思うが、規制委員会の審査はこれからも続いていく。世界でも最も厳しい安全基準にのっとって科学的、技術的にしっかりと審査し、安全だという結論が出れば、立地自治体の皆さんのご理解をいただきながら再稼働を進めていきたい」と述べました。 <br />そのうえで安倍総理大臣は、「政府、事業者それぞれが、しっかりとその責任を果たしていくことによって、福島第一原発の事故のような過酷な事故が二度と起こらないようにしなければならない」と述べました。 <br />「待ちに待った」 <br /> <br />日本商工会議所の三村会頭は記者会見で「待ちに待ったということだ。原子力規制委員会の厳密な審査が終了し、地域住民の了解という次の段階に入ったということは、1つの大きなステップが前に進んだと高く評価している。この夏には間に合わないだろうが、できるだけ早い時期に稼働に結びついてほしい」と述べました。 <br />「再稼働は持続的成長に不可欠」 <br /> <br />経済同友会の長谷川代表幹事は「新しい規制基準をクリアした原子力発電所の再稼働は、ようやく成長軌道に乗りつつある日本経済の持続的成長に不可欠だ。今回の審査結果の公表を契機にほかの原発についても迅速な審査が行われることを期待する」というコメントを出しました。 <br />「原発稼働が国益に合致」 <br /> <br />大手商社などで作る日本貿易会の小林栄三会長は都内で行われた記者会見で、「日本人は省エネにも協力的なので、とりあえずは原子力がなくても乗り切れているが、経済が成長し、海外の企業が日本に進出する際に、エネルギーのコストが最大の問題になるのは自明の理なので、安全が確認された原発を着実に動かすことが日本の国益に合致すると確信している」と述べました。 <br />「課題は人の対応力」 <br /> <br />原子力工学が専門で、新しい規制基準を作成した原子力規制委員会の有識者会合の委員を務めた明治大学の勝田忠広准教授は、「審査では、書面上でこういう重大事故対策を取ると言っているだけなので、必要とされる機器や人がきちんと動くのかという問題がある。福島第一原発と同じような事故はそれなりに防げると思うが、違う形態の事故が起きたり、経験したことがない自然災害が起きたりしたときに、どの程度、対応できるかは分からない。課題は人の対応力で緊張感を持って訓練が行われているかを、規制当局や第三者が厳しくチェックできるようにすべきだ」と指摘しました。 <br />また、住民の避難計画を巡っては「どのように避難するかが最も重要なので、安全対策が審査を通ったからこれで大丈夫ではない。再稼働の判断には防災対策が十分かどうかも考慮すべきだ」と話しています。