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長崎原爆も同心円の線引き 被爆者ではなく被爆“体験者”

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「被爆体験者」が提訴へ 非科学的施策に終止符を(長崎新聞)<br />http://www.nagasaki-np.co.jp/press/ronsetu/07/044.shtml<br /><br /> 原爆の放射線、爆風、熱線は同心円状に広がっていく。従って、原爆被害の強弱は、基本的に爆心地からの距離によって決まることは、自明の理である。<br /><br /> にもかかわらず、爆心地から半径十二キロ以内で被爆しながら、被爆者として認定されず、援護の対象外とされてきた人々が大勢いる。被爆者でありながら被爆者として認定されないこうした人々を、国は戦後六十年近くを経て「被爆体験者」と名付け、ようやく援護に乗り出した。<br /><br /> だが、もともとが、同じ距離で被爆した人々を「被爆者」と「被爆体験者」に選別するという非科学的態度に立脚している上、長年の被爆地世論に押されて、しぶしぶ実行に移したものだけに、国の施策はすぐに後退し始め、財政負担軽減のために援護対象者数の縮小が図られた。当然、「被爆体験者」は怒る。そうした経緯の上に、持ち上がったのが、「被爆体験者」による集団提訴の動きである。<br /><br /> 長崎で被爆し、現在は県内外に居住する「被爆体験者」でつくる全国被爆体験者協議会は十一月にも、国を相手取り、被爆者援護法に基づく被爆者としての認定と、健康管理手当の支給を求める訴訟を長崎地裁で起こす。同会の小川博文会長は「爆心地からの距離は同じなのに、『被爆者』『被爆体験者』と区別されるのは不合理で、憤りを感じる」と語る。国は、「被爆体験者」の疑問、怒りに真正面から向き合うべきだ。<br /><br /> このような不合理な事態が生じた、そもそもの発端は、一九五七年の被爆地域指定に際して、爆心地からの同心円で線引きせずに、当時の行政区域に基づいて線引きしたことにある。被爆地域は南北に縦長のゆがんだ形になった。<br /><br /> これではあまりに不合理であるため、長崎市周辺地域で被爆地域是正運動が巻き起こった。長年の運動が実り、国は七四-七六年になってようやく、被爆地域の外側に「健康診断特例区域」を設け、援護対象を広げた。それでも援護法の対象となる半径十二キロ以内の被爆者すべてが認定されたわけではなく、対象外とされた人々が大勢残った。<br /><br /> そして二〇〇二年、国は十二キロ以内の被爆で特例区域外の人々を初めて「被爆体験者」と名付け、「被爆による精神的影響が残っている」ことに着目して医療費を支給する支援事業を開始した。それでも、健康管理手当などは支給せず、なお格差が残った。<br /><br /> 被爆者認定範囲拡大の歴史を、かいつまんで振り返るだけでも、不合理な施策を不合理な弥縫(びほう)策で乗り切ろうとしたために、いつまでも援護の空白地帯を解消できずにいる国の過ちが明らかになる。その解決は、爆心からの距離で等しく被爆者と認める科学的態度に立ち戻る以外にない。<br /><br /> 提訴の準備を進めている「被爆体験者」は皆、高齢だ。国は、提訴を待たずに解決に動くべきである。九日、長崎を訪れる安倍晋三首相はこの問題についても、しっかりと被爆地の声に耳を傾けてほしい。(高橋信雄)<br /><br />(2007年8月8日長崎新聞掲載)

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